★編集発行人は本づくりのプロ 社長が決算申告してわかったこと③

編集発行人
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編集発行人は本づくりのプロである。

と言っても、ふつうの人にはどんな仕事か、想像もつかないと思う。
商業出版の歴史は優に100年を超えるが、
編集発行人」の仕事についてはほとんど説明されていない。

 

本の最終ページの奥付にある「編集発行人」は出版社社長を指す。
ここで私がいう編集発行人は単に「編集者」のことをいっている。
順に説明していこう。
イメージしやすいように、まず新聞の編集から。
(私は新聞社で長く編集記者を務めていた)

 

■新聞の編集者は冷や汗をかく

ごく簡単に言えば、新聞の編集者は見出しを付け、
紙面レイアウトをする(「割り付け」という)人である。
どの紙面もどの紙面もそのページで完結している。
中途半端に数行が空いているような紙面はほとんどない。
きっちり余すことなく、そのページに記事を収める。
これ、簡単な技術ではない。
まして1分1秒を争うような局面でやってのけるのは。

 

「冷や汗をかく」という言葉がある。
比喩ではなく、実際に冷や汗をかいたことがあるだろうか。
整理記者(※新聞の編集者のこと)はしばしば悪夢を経験する。
降版時間(※最終締め切り)まで10分しかない。
しかし大ニュースが発生し、紙面は全面差し替えなければならない。
ところが待てど暮らせど肝心な記事が来ない。

 

やっと来た(記事を書く取材記者も必死だ)。
残り時間はあと2分!
予定していたスペースに記事は足りない。
トップ記事下から組み換えなければならない。
<間に合うか?!>
そんな時、気づけば背中がベットリと汗で濡れている。

 

■本の編集者は手づくりの逸品

新聞づくりの醍醐味はスピード感にある。
瞬時に判断して、記事の価値を決め、それを即刻紙面化していく。
それに対し、本の制作は手づくりの逸品に似ている。
いかに気持ちよく読者を著者の世界に誘うか。
奇をてらわず穏やかに著者の思いに寄り添い、読者の道案内となる。

 

誌面レイアウトはあまりに自然なので、なんの造作もないように見える。
しかし新聞の紙面構成よりはるかに時間が掛かる。
新聞は1ページ完結で、編集者も紙面に対し1人がつくが、
なにしろ本は数百ページもあり、編集者は1人である。
簡単に原稿をさっと流しただけに見えても、そんなに簡略では済まない。
部や章を区切り、本文には小見出しを入れる場合がある。
写真や図版、表を入れるとなると、さらに手間がかかる。
神経を使い、集中力を要し、しかも延々と続く。

 

以上は誌面レイアウトについて書いたが、
誌面を組むことは編集者の仕事のごく一部分に過ぎない。

 

■著者と編集者が出版の両輪

もっと大きな仕事は”一番目の読者”になることだ。
本にする、しないの目利きが問われている。
最終的な判断は「長」に任せられるにしても、
編集者が「いける!」と思わなければ”候補”にものぼらない。
出版社の企画本の場合、本が世に出る出ないのカギは編集者が握っている。

 

本の編集者

本づくりで編集者が果たす役割は大きい

 

 

編集者はピンと来た原稿に”注文をつける”こともある。
「もある」ではない、しばしば横やりを入れる。
入れなければ売れる本にはならない。
テーマや構成、文体、文章にまで口を挟み、
著者の思いと読み手側のニーズとのバランスをとる。
だから完成した原稿は、元の原稿とは姿も形も変わってくる。
本づくりは著者と編集者との共同作業であると言ってもいい。

 

書店にある本の多くがこうした過程を経ている。
「今の本は粗製濫造」という人もいるが、私はそうは思わない。
たいていの本は著者の思いと編集者の魂がこもっている。
一冊の価値はそこから生まれてくる。

>2ページに続く↓↓↓

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