★日本語は主語を省け!② 無意識にあなたも実践しているはずだ

Pocket

日本語は主語を省け。
あるいは、日本語はもともと主語がない言語である、ときのう書いた。
すとんと腑(ふ)に落ちただろうか、心配だ。

 

■自然に主語なし文章を書いている

何か特別な手法を言っているように思われたのではないか。
ふつうに学校で勉強してきた人は、
「主語」を書くのは当たり前だし、
「主語」なくしては書けない、と思っている。
ところがそんな人でも、案外この手法は使っているものだ。
きのうの投稿にFacebookで以下のようなコメントをいただいた。

 

  • 確かに、言われてみれば、その通りですね。自分の文章にも応用してみます。
  • よくわかります。簡素で読み易い文章には主語がない場合が多いですね。最近「私は」を抜くことで文章がまとまることを実感したばかりです!

 

ほらね、主語がない。
試みにFacebookのニュースフィードを流して読んでみられよ。
多くの人が主語なし文章で書いている。
ことさら「論だ」「技術だ」「訓練だ」というまでもなく、実践されている。
腑に落ちなかったあなたでも、かしこまって書かないときには
自然に主語なし文章を書いているのではないかしら。

 

主語が省略できるケースを3つ挙げた。
書き手(話し手)である場合
状況から見て、誰が主体かがわかる場合
誰が主体であるか問われない場合

 

会話を思い出してほしい

友達との会話を思い出してほしい。私たちは主語をほとんど話していないはずだ

 

■人称代名詞を思い切り外した例文

例文を紹介しよう。
作曲家・小倉朗さんの『自伝 北風と太陽』の一節。
おそれ多くも「主語の省略」と思われる個所を( )で示した。

 

坂町の家で姉のピアノがなり始める頃、座敷に蓄音機が入った。
レコード・コンサートは恒例に従って夕食の後にとり行われた。
音楽会にお子様入場お断り――その習慣はここにも適用されて、はじめのうち僕は招待されることがなかった。

そこで、レコードが鳴り出すと( ① )唐紙越しにきいた。
座敷の入り口と階段の上り口に当たる畳廊下は、夜はいつも真っ暗な空間になったが、
暗さは( ② )音楽を聴くのに不都合はなく、唐紙は音をよく通したから、
ここがしばらくの間、僕の特別席になる。
ところがあるとき、座敷から出てきた叔父が暗闇の僕につまずく。
この椿事をきっかけとして、以後( ③ )座敷の聴衆に加わることになった。

まず( ④ )蓄音機を床の間から紫檀のテーブルに移す。
黒光りするテーブルの面に、蓄音機の臙脂の箱が鏡のように映った。
その箱に、( ⑤ )そっと顔を寄せると、香料の利いたミシン油の臭いが軽く鼻をつき、
( ⑥ )手回しのとってを回すと、ジージーと軽い静かな音がした。

( ⑦ )一回ごとにそうしてネジを巻き、一回ごとに( ⑧ )カチャカチャと鉄針を取り替え、溝を汚さぬように、貴重品を扱うような手つきでレコードを吹いたり、
( ⑨ )ターンテーブルに乗せたり裏返し、慎重に針を落として音楽が鳴り始める。

 

は「僕」。②は「僕」でもいいし「他の誰か」でもいい。③も「僕」。
④は「坂町の家の人の誰か(たぶん叔父)」。⑤⑥は明らかに「僕」だ。
そして⑦⑧⑨は「坂町の家の人の誰か」と思われるが、この文脈だけでははっきりしない。
(しかし前後を読んでいる読者には当然「誰か」わかっているのだろう)

 

きのうは書く主体が「自分」であることを前提に、「自分」は省けるのだと書いた。
この例文を読むと日本語は、
前後の状況から主語が類推できる場合にも積極的に省かれることがわかる。
太字②③―、主体が誰かが明瞭なケースと主体が誰かを問われないケース―だ。
(⑦⑧⑨は太字のケースに相当する)

 

■「総称的な主語」も省略される

問題は太字のケース。
日本語の主語が省略されるケースで、もうひとつ頻繁に使われるパターンがある。
これを説明しておかないと具合が悪い。
何を説明したいのか自分ではわかっているのに、例がすぐに出てこない。
やむなく昨日、困ったときのインターネットで「検索」した。
「日本語」「主語」「省く」をキーワードにして・・・・・
よいファイルを見つけた!

 

上海玄諭翻訳というサイトの「日本語における主語の省略」という文書。
同社は「中国語・日本語翻訳を専門とする上海の日本人経営企業」だそうだ。
隔靴掻痒(かっかそうよう)の思いでいた太字③のケースを、上海玄諭翻訳は
<行動の主体が誰であるかが問われない「総称的な主語」>と説明する。

 

1.あの地域では、(Aが)熊に遭遇する可能性がある。
2.(Aが)毎日飲み歩くのは健康によくない。
3.(Aは)この事件を世界金融危機と呼ぶ。
4.(Aは)肉に塩を振り、しばらく寝かせる。
5.(Aは)お酒を未成年に販売してはいけない。

こういったケースでは主語はまったく不要、というより
( )書きで「A」を補っているが、Aという人称代名詞を入れるとかえって読みにくくなる。

 

■省ける主語は全部削ろう

言語学者のように理屈をつけ出すときりがない。
要はきのう、きょうでお話したかったのは、
日本語の文章は、省ける主語は積極的に省こう―ということである。

 

人の文章にはそれぞれクセがある、意識して主語を省けば文体も変わる。
よい文章を書くコツは、書いた文章を読み返すこと。
リズムよく読めるか、何度でも読んでみる。
人称代名詞が入っているために突っかかったり、
もたもたしていると感じられる個所が見つかるはずだ。
省いても意味が通じるようなら、思い切って主語を削る。

 

すっきりしたよい文章を書きたいなら、主語は削れ!
最後は、あなたが「省くぞ」と決意するかどうかだ。

 

<ジャーナリスト石川秀樹>

 

【「思いを伝える書き方講座」関連記事】

★お客様を鷲づかみにした礼状、 それは”名文”ではなかった!!

★思いを伝える文章は名文に勝る! 渾身の告白に揺さぶられた!!

★日本語は主語を省け!① 99%が知らない簡潔な文章のコツ

★「思いを伝える文章講座」のための一文 実践を強くおすすめ!

Pocket

ads by google